季節
夢というとファンタジーな感じがするが、夢がある。
海の近くの家に暮らして、行きたい時に海を見に行く生活がしたい。できれば歩いて行ける程の距離で、静かなところが良い。
この時間になると、いつもそれを夢見る。まだ暗く青い時間に、ふらっと外へ出て、朝焼けを見られるような生活がしたい。
そう思いながら、一人暮らしはずっと出来ないでいる。遠い所に一人で住むというハードルはとても高い。
家から離れるのがどんどん怖くなっている。
出来れば外出もしたくはない。
「あの日」が来る前から、無理をしていた。
無理をしないで生活をすることは、本当に難しい。メーターが体に付いていれば分かるのに、分からないから無理に気づかない。
そして一番は、無理をしなければ「普通」の生活は出来ない。
2月と3月の記憶は、灰色だ。
思い出そうとしてもモヤが掛かっている。自分でそんなフィルターを掛けているのかもしれない。
2月と3月、仕事のことが大半だが、自分はかなり酷いことになっていた。
3月末になるまで、他人に言われるまで、それに気づかなかった。
周りに当たり散らし、人を傷つけ、自分を切り刻んでいた。
3月末に知った時、何もかも崩れ落ちた。
毎日毎日自分と向き合って、自分のことは考えたくなくなった。どうやったら人に迷惑をかけず世界から消えることが出来るだろうかと考えた。考えるのから逃げるためにずっと寝ていた。
以前より、体が気圧や気温の影響を受けやすいと感じるようになった。
さっきまで元気だったのに、体と心の中に重いものが覆い被さる。頭も内臓も上手く動かなくなる。天気病。周りの人が言っていることを脳が真似しているだけなのかもしれない。
しかし、気圧予報など見て自分の症状と合っていると、安心する。
「一人暮らしは怖いから」
「りなが居なくなったから」
「気圧のせいだから」
言い訳と本当の理由の区別はどうやって付けたら良いのだろう。
でも、りなのせいにすることは、悲しい。